■ストーリー

このドラマは、この邸宅に思いを残す青年と、この建物さながら蝕まれてゆくわが身をもてあます女の、現前化しない愛の物語である----

渋谷南平台あたりの住宅地の一角に、ボストンバックをひとつ提げた青年ナオヤがどこからか姿を現す。
やってきたのは、かつてよく遊んだ友達ケンイチの家だ。
しかし、そこは真っ暗にひからびたひまわりに覆われすっかり廃墟と化していた。
人が住むには荒れすぎてしまっていたが、ふと目を凝らすとケンイチの姿が。
黙ってここから引っ越してしまっていたのを気にしてナオヤを待っていたという。
その日はケンイチの誕生日。
そのことを失念していたナオヤは慌てて誕生日プレゼントを買いに行く。

戻ってみると、ケンイチの姿はなく、代わりにウェルテルという名の小鳥を飼う女・マリーがいた。
マリーはワケありの様子で、この屋敷に隠れているらしい。
彼女が使っている部屋にナオヤは懐かしさを覚える。
そこはかつてケンイチのお母さんの部屋で、壁にはあの頃と同じ鳥の絵が描かれていた。
滅びに向かってゆっくりと変化しているこの屋敷の中で、ナオヤは過去を懐かしむ。
ケンイチと渋谷の街を庭のように走り回った。
この家にもよく遊びに来た。
ケンイチのお母さんがとても優しかった。
そして、ゼラニウムの花の赤さ・・・・・・。

過去の記憶の洪水に襲われるナオヤにおかまいなしで、たくさんの人々が屋敷を訪れる。
マリーを愛するアオヤギ、マリーがこの屋敷に来る前に住んでいたアパートの雇われ管理人フクダ、アオヤギの会社の同僚フナキ、アオヤギを田舎から心配して追ってきた父と妹トシミ。
マリーの安息の地はこの屋敷の中だけだったのに、もはやそれすらも破られはじめていた。

彼らは、ここがケンイチの家だということを知らない。
ケンイチはどこへ行ってしまったのか。
混乱する意識の中で、ナオヤが封印していた哀しい真実が甦ってくる。

(パンフレットより)